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子供の頃から主婦に憧れていた [ブログ]

「主婦気質」みたいなものがあるのだと思う。
いいかえれば「オバチャン気質」。

別に“主婦”でもなく、性別・男で、実際にはオジサンであっても「オバチャン気質」の人は結構いっぱいいる。
そして、私はどうやら子供の頃からオバチャンだったような気がする。

私は田舎育ちである。
だから葬式や法事も、場合によって結婚披露宴も自宅でとり行うものだったが、そんなときオジサンたちは決まっていい調子で酒を飲む。彼らが声高に話している町長選挙の行く末なども興味がないわけではなかったが(だって社会科のテストで役に立つから。昭和40年代の学校には「生きる力をつけるための『生活』や『総合』の時間」なんてなかったが、日常のなかに総合学習のネタがいっぱいあったのである)それよりも台所で隣組のオバチャンたちが話しているどうってことない村の噂話の方がずっと面白かった。
台所はたいてい北側にある。
裏口の外には魚をさばいたりするための流しが据え付けてある。山のような食器が外の流しにも積み上げてある、そのあたりからそっと台所をのぞいて、オバチャンたちの会話に耳を傾ける。

オバチャンたちはまるでチャットかメッセンジャーで話すかのように、同時進行で全員が我先にと喋り続ける。
何がすごいって、チャットやメッセのように文字は残っていないのに、先に誰かが言ったことに対して3拍ぐらいおいてから答えたりして、最終的にはいくつものストーリーが見事に噛み合って完成されていく。
しかも、である。もっとすごいことには、彼女たちの手は休みなく動き続けて、行事のための食事が見事につくられていくのである。

途中で裏口から首だけ出してのぞいている私に気づいて、「あれあれ、マーコちゃん、お腹空いたの? これ、食べる?」とその辺にあった煮物を菜箸かなんかにさして、ひょいとくれたりもする。

ひとつのことしか出来ないオジサンたちとくらべると、オバチャンたちはすごい。
私は田舎独特の人々の結びつきと情の濃さに辟易しながらも、実はこういう場でオバチャンへの憧れを育み、オバチャン気質を養ってきたのかもしれない。

食事と言わず、ごはんと言う。キッチンではなく、台所と言う。初めてつくった料理は肉じゃが。たしか22歳ぐらいのときには、もう「おねえさん」と呼ばれるより「オバチャン」と呼ばれるのがうれしかった(考えてみればずいぶん長い間オバチャンをやっていることになる)。


2006-11-14 21:08  nice!(1)  トラックバック(1833) 

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